UAIセミナー「Webアクセシビリティ@秋葉原」-JIS改正原案の紹介- 発表資料HTML版 PDF版はここ
改正版JIS X 8341-3を使った試験方法
2009年5月22日 15:10~15:40 @秋葉原ダイビル
梅垣 正宏
1. 目次
- 背景
- JISの試験と適合性評価
- 改定版 X8341-3 のプロセス規定 /(箇条6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件)
- 改定版 X8341-3 の試験方法 / (箇条8 試験方法)
- 今後の課題
2. 背景
WCAG 2.0 は testability を確保することを目指した
- 各国で、WCAGは法律や標準で参照され、調達に使われる
- WCAG 2.0 に適合しているかどうかを判断できることが必要
EUでは欧州指令376に基づき、WAB Cluster などで試験方法を開発
- 2010年をめどに各国がアクセシブルなICTの調達、モニタリングの仕組みを作る
JIS X 8341-3:2004 では testability が十分ではなく、どのように評価してよいかが明確でない
- 「X 8341-3に準拠する」といいながら、レベルがまちまち
- いろいろな評価法が作られて、客観的でないランキングなどが実施されている
- 現場では、性能が明確でないテストツールでチェックするだけ
改定版JIS X 8341-3では、
- WCAG 2.0 の適合性評価(Conformance)を取り込んである
- 欧州で開発された UWEM 1.2 を参考に、手法を追加した
- JIS (とISO) の適合性評価に合わせこんである
- したがって、適合性評価でも国際協調可能
3. JISの試験と適合性評価・認証
試験方法
- 「特性値を求めるための手順、要求事項への適合を確認するための手順及び/又は結果の再現性を確保するための手順について規定」 (JIS Z 8301)
- 原理、装置、手順、試験結果の表し方、試験報告書などの項目も必要に応じて定められる
適合性評価
- 「適合性評価」は製品、プロセス、システム・・・に関する規定要求事項が満たされていることを実証すること(JIS Q 17000)
- 製造者(供給者)自ら行う場合は「自己適合宣言」
- 「認証」は経済産業省に登録した登録認証機関が試験を行って「認証すること」で、認証が得られるとJISマークが使える

4. 改訂版 X8341-3 の適合性評価スキーム
- X8341-3 の「箇条6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件」「箇条7 ウェブコンテンツに関する要件」の要求事項に基づいて開発・制作
- 「箇条8 試験方法」に基づいて試験を実施
- 試験結果表示や関連する支援文書を作成
- JIS Q 1000 により自己適合宣言(必須ではない)
- 認証スキームは今のところ考えられていない

5. 改定版 X8341-3 のプロセス規定
(箇条6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件)
6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件
- 6.1 企画
- 6.2 設計
- 6.2.1 要件の定義
- 6.2.2 達成基準を満たすことができないウェブコンテンツ技術の非干渉な使用
- 6.2.3 達成基準を満たすことができないウェブページに関する例外
- 6.3 制作・開発
- 6.4 検証
- 6.5 保守・運用
- 6.5.1 アクセシビリティの品質確保
- 6.5.2 フィードバックによる意見の収集
- 6.5.3 アクセシブルな問合せ手段の提供
6. 箇条6に基づく開発の流れ
・6.1 企画
- ウェブアクセシビリティ方針を策定,文書化
- 目標とするウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級を明示
・6.2 設計
- 6.2.1 要件の定義
- a) 適用する達成基準の選択
- b) 使用する技術,達成基準に適合するための実装方法を明確にする
- c) 達成基準を満たすことを補助するオーサリングツールを選定
- d) 利用者が実際に使用するユーザエージェントを想定
- 6.2.2 非干渉:達成基準を満たさない技術を使ってもよいが、その技術が干渉して操作などを不可能にしないことを保証する
- ― 7.1.4.2 音声制御に関する達成基準
- ― 7.2.1.2 フォーカス移動に関する達成基準
- ― 7.2.2.2 一時停止,停止,非表示に関する達成基準
- ― 7.2.3.1 3回の閃光又は閾値以下に関する達成基準
- 6.2.3 代替版:技術的制約などでどうしても満たせない場合には、代替版を用意してもよい。ただし、制限事項がある。
7. 箇条6に基づく開発の流れ(続き)
6.3 制作・開発
6.4 検証
6.5 保守・運用→X8341-3:2004でも同様の記述
- 6.5.1 アクセシビリティの品質確保「ウェブコンテンツを保守・運用するときには,ウェブアクセシビリティの品質を確保し,維持・向上」
- 6.5.2 フィードバックによる意見の収集「ウェブアクセシビリティの取組みに対する利用者の意見を収集する手段を用意」
- 6.5.3 アクセシブルな問合せ手段の提供「ウェブコンテンツに関する利用者からの問合せを受け付けることを目的とした何らかの手段を用意する場合,用意する手段はアクセシブル」
8.改定版 X8341-3 の試験方法
8 試験方法
- 8.1 適合試験の要件
- 8.1.1 ウェブページ単位
- 8.1.2 ウェブページ一式単位
- 8.1.3 第三者によるコンテンツにおける例外
- 8.1.4達成基準を満たすことができないウェブページの試験に関する例外
- 8.2 試験の手順
- 8.3 試験結果の表示
- 8.3.1 ウェブページ単位の場合
- 8.3.2 ウェブページ一式の場合
- 8.3.3 追加の表示事項
9. 8.1.1 ウェブページ単位
ページ単位での試験は、WCAG 2.0 の適合性評価(Conformance)と同じ
a) ウェブページ全体
- 適合試験はウェブページ全体
- ページでは必ず同じ等級を適用
- ウェブページの一部を除外してはならない
- ただし、第3者によるコンテンツの例外あり
b) 一連のプロセスが適合
- 一連の手順が存在する場合は、一連の流れですべて適合する
- たとえば、フォームの入力処理と結果表示など
10. 8.1.2 ウェブページ一式単位
ウェブページ一式=ウェブサイト
次のいずれかの方法でページを選択し,8.1.1 の方法を用いて試験
a) すべてのウェブページを選択する場合
- 全ページを試験する
- ページごとに適合する等級が異なってもよい
- 試験結果は、最も低い等級
b) ランダムに選択する場合
- すべてのページからランダムにサンプリングして選択して、試験する
c) ランダムではない方法で選択する場合
- サイトの構造や設計方針,利用者の利用状況を明確にして,対象ページを選択する
11. ランダムではない方法で選択する場合
以下のページを必ず含む
- ウェブページ一式の入り口となるウェブページ
- ウェブページ一式のマップを提供するウェブページ
- アクセシビリティに関する方針,解説のあるウェブページ
- 利用者からの問合せを受け付けるウェブページ
- ウェブページ一式のヘルプ機能を提供するウェブページ
以下のことを考慮に入れる
- 利用者にとって,そのウェブページ一式を利用するのに不可欠なウェブページ
- ウェブページ一式がカテゴリー分けされている場合,それぞれのカテゴリーの入り口と・なるウェブページ
- ある決められたページ構造,又はスタイルシートに基づいて複数のウェブページが作成されている場合,その代表となるウェブページ
- フォーム,フレーム,データテーブル,スクリプトが使われているウェブページ
- 音声,動画などの時間に伴って変化するメディアがあるウェブページ
- 利用者のアクセスが多いウェブページ
12 8.1.3 第三者によるコンテンツにおける例外
この箇条は、 WCAG 2.0 Statement of Partial Conformance - Third Party Content と同等
- 第三者がコンテンツを追加するページで、例外が認められる
- 電子メールのプログラム,ブログ,利用者がコメントを追加できる記事,利用者がコンテンツを提供できるようなアプリケーション,複数の提供者から集めたコンテンツで構成されるポータルやニュースサイト,動的に挿入される広告
次の二つの方法から選択
- a) 試験は,分かる範囲で実施することができる。もし第三者によるコンテンツが監視されていて,2営業日以内に修正される(適合していないコンテンツが削除されるか,適合するように修正される)ならば,その第三者によるコンテンツにおいて問題があったとしても,そのウェブページは適合しているとみなすことができる。ただし,適合していないコンテンツを監視・修正できないのであれば,適合しているとはいえない。
- b) 特定された部分を除外して試験を行ってもよい。そのような場合,8.3 に従って,“ウェブページ全体としては試験していないが,以下の第三者によるコンテンツを除いてアクセシビリティ達成等級 X で試験を行った。”というような例外事項の記述を行うことができる。ただし、このような例外が認められるのは、次のすべての条件を満たす場合に限る。
- 1) コンテンツ制作者が監視・修正できるコンテンツではない。
- 2) 利用者が識別できるように,例外を適用する箇所が明確に説明されている。
13. 8.1.4達成基準を満たすことができないウェブページの試験に関する例外
- 代替ページがあり、6.2.3 (達成基準を満たすことができないウェブページに関する例外)の条件に合致している時は、代替ページだけを試験してよい
- たとえば、Ajaxを使った電子メールアプリケーションがあるときに、そのままでは適合不可能なので、HTMLバージョンを用意しておくといったことが可能。
14. 8.2 試験の手順
- a) 試験環境の確認 試験に先立って,使用しているウェブコンテンツ技術を確認→6.2.1 要件の定義のb)と関係
- b) 実装チェックリストの作成 箇条7の達成基準に基づいて,実装方法及びその試験方法を明確にした,実装チェックリストを作成
- c) 試験対象の特定 8.1 により試験の対象となるウェブページ及び方法を選択
- d) 試験 対象とするウェブページを選択し,試験を実施する。試験結果を実装チェックリストに記載
- e) 達成基準チェックリストの作成 実装チェックリストに基づき,達成基準チェックリストを作成
15. 実装チェックリストの例
- 達成基準ごとに実際の技術(HTML/CSS/JavaScript/FLASHなど)にあわせて作成したチェックリストを使って確認

16. 達成基準チェックリスト
- 実装チェックリストで確認した各達成基準の適合状況を転記する

17.試験方法 (改定版JIS X8341-1附属書JC)
- 人によるチェックを詳細化
- 観察:ある程度の知識でOK
- 専門家評価:アクセシビリティの専門家
- 資料的論拠:文書化された根拠がある場合
- 利用者評価:必要に応じて実施 (オプション)

18. 8.3 試験結果の表示 / 8.3.1 ウェブページ単位の場合
ウェブページ単位で試験結果を表示する場合は,次の内容を含まなければならない。
- 達成したウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級
- 試験を行ったウェブページのURI
- 8.1.3の例外事項がある場合,該当する箇所を特定できる説明
- 達成基準を満たすために使用したウェブコンテンツ技術のリスト
- 達成基準チェックリスト
- 試験実施期間
- 注記 JIS Q1000などを用いてこの規格への適合宣言を行う場合には,それらの規格による宣言も参照すること。
19. 8.3 試験結果の表示 / 8.3.2 ウェブページ一式の場合
ウェブページ一式での試験結果を表示する場合は,次の内容を含まなければならない。
- 達成したウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級
- ウェブページ一式を特定するための範囲,及び可能な場合は総ページ数
- 試験の対象ウェブページを選択した方法 (8.1.2参照)
- 試験を行ったウェブページのURI又はウェブページ群のURIリスト及びその数
- 8.1.3の例外事項がある場合,該当する箇所を特定できる説明
- 達成基準を満たすために使用したウェブコンテンツ技術のリスト
- 達成基準チェックリスト
- 試験実施期間
- 注記 JIS Q1000などを用いてこの規格への適合宣言を行う場合には,それらの規格による宣言も参照すること。
20. 8.3 試験結果の表示 / 8.3.3 追加の表示事項
ウェブページ単位又はウェブページ一式での試験結果を表示する場合は,次の内容を含・めることが望ましい。
- ・実装チェックリスト
- 試験に使用したチェックツール等の名称及びバージョン
- 使用しているが適合には依存していないウェブコンテンツ技術のリスト
- コンテンツを検証するのに用いたオペレーティングシステム,並びに支援技術を含むユーザエージェントの名称及びバージョン
- 宣言する等級より上の等級で満たしている達成基準のリスト
- アクセシビリティを向上するために達成基準以上に追加で施した措置に関する情報
21. まとめ
試験方法
- 達成基準を技術レベルに展開して確認する
- サイト単位でサンプリング手法などを使って、全数検査しなくてもよい
- サンプル数が多いほどより厳密な適合が可能
適合性評価
- 達成等級に合わせて、目標設定、適合性評価可能
- 改定版 JIS X8341-3にしたがって作られたことを証明するには、少なくとも定められた「試験」を実施し、「試験結果の表示」を行うことが必要
- 試験結果の表示が可能な状態になれば、JIS Q 1000 を使った自己適合宣言も可能
- 納入仕様書では、「JIS X8341-3 に適合していること」「試験結果をあわせて納品すること」といった記述が盛り込まれていく
22. 今後の課題
アクセシビリティ・サポーテッド情報
- 支援技術の現状がわからないと、どの技術が使えるかがはっきりしない
「使える」実装技術の明確化
試験方法の明確化→どれに、どの方法を使うか?
- チェックツール(測定、自動化試験)
- 人の判断(専門家でなくてもできる「観察」)
- 専門家の判断(専門家評価)
サイト単位試験
-
サンプリングの場合、何ページ試験すべきか書いてない
-
サンプリングでない方法は、該当しそうなページだけを集中して作りこめば、「試験対・策」が可能
品質は向上するが、時間がかかり、コストUP
- 試験を視野に入れた、より賢いテストツール、効率的な手法の開発が必要
- テンプレート設計やCMSを意識した試験の簡略化も必要
みんなの公共サイト運用モデル
- 総務省公共サイトの運用モデルも改定版をベースに改定されるべき
Webアプリケーションへの対応
- 日本では支援技術の開発がWAI-ARIA対応などで追いついていないので、開発が進まないと適合できない
2009年5月22日 UAIセミナー「Webアクセシビリティ@秋葉原」-JIS改正原案の紹介- Copyright (C) 梅垣正宏